第63回 膝の痛み (Knee pain) =運動およびスポーツ外傷によるもの= PDF 印刷 E-mail
投稿者 Ildong Kim   
2005年 October 02日 Sunday
膝の痛みは、内科医や家庭医を受診する筋骨格系の病気のうち3分の1を占めると言われるほど頻度の高い訴えです。特に、スポーツや運動を行っている人の半分以上が何らかの膝の痛みを訴えると言われています。軽い膝の痛みは、膝の使いすぎ、スポーツを行う際の準備運動や整理運動の不足が原因になっています。

膝の構造

 膝は、体重を支え、歩行に関与する大切な関節で、体で一番大きな関節です。膝は4つの骨から構成されています。大腿にある大腿骨(femur)、下腿を構成する脛骨(tibia=太い方の骨)と腓骨(fibula=細い方の骨)、それに膝のお皿である膝蓋骨(patella)です。膝関節を主要に支える大腿骨と脛骨は4つの靱帯によって接合しています。膝関節内に位置する前十字靱帯(ACL)と後十字靱帯(PCL)、それに膝の左右にある内側側副靱帯(MCL)と外側側副靱帯(LCL)です。大腿骨と脛骨の間には半月板と呼ばれる厚い軟骨が2つあり、膝関節の動きをスムーズにし、膝関節に掛かる衝撃を和らげる役割をしています。膝関節前部に位置する膝蓋骨は、靱帯によって大腿骨と脛骨に結合しています。

膝の痛みの原因

 膝の痛みは、その発症の仕方、痛みの場所、基礎疾患の有無、また診察等によってその原因を探っていきます。スポーツや運動に関係のある痛み、または高い所から飛び降りた直後に起こる痛みは、外傷性の原因を考えます。特に、何かが切れるような感じがすれば、靱帯の断裂や半月板損傷の可能性が高くなります。外傷性の膝の痛みでは、膝が突然動かなくなったり関節が不安定になることがあります。
 外傷後2〜3時間以内に膝の関節液が急速に溜まると、十字靱帯の損傷や関節内の骨折が考えられます。逆に、1日以上してからゆっくりと関節液が増加すると、半月板損傷が考えられます。外傷と関係がなく、急速に関節液が増えると、痛風や偽痛風かもしれません。徐々に関節液が溜まると、リューマチ様関節炎などの内科的な病気の可能性が出てきます。
 医師は膝の触診・検査を行った上で、関節液のある時は関節液穿刺を行ったり、血液検査やレントゲン検査を行なったりします。また、MRI (核磁気共鳴画像)が必要な場合もあります。以下に、運動またはスポーツによる、膝の痛みの原因になる代表的な疾患を簡単に説明します。

外傷・スポーツ障害によるもの

・使いすぎ症候群(Overuse syndrome)
 長時間、同じ動作を繰り返したり、膝に負担が掛かりすぎると、膝の靱帯、筋肉などに損傷を受けたり炎症が起こります。特にランナーに多く、準備運動不足、過度の運動量、あるいは自分のレベルを超えた高度な練習などを行うと起こります。痛みは腱炎や滑膜包炎の形で起こることが多いのですが、この症候群に含まれる疾患としては下記のようなものがあります。膝に近い脛骨の部分で、縫工筋、薄筋、半腱様筋が付着した部分で起こる鵞足炎(がそくえん=pes anserinus bursitis)、腸脛靱帯と大腿骨が擦れて起こる腸脛靱帯炎(iliotibial band syndrome)、ジャンパー膝と呼ばれる膝蓋腱炎(patellar tendinitis)、膝関節内の滑膜ひだ(余分な組織)が使いすぎの結果として炎症を起こしたタナ障害(滑膜ひだ症候群=Medial plica syndrome)などです。

・膝蓋大腿関節痛症候群(Patellofemoral syndrome)
 膝前部の痛みが起こりますが、膝の外傷や解剖学的異常が膝蓋骨の滑らかな動きを阻害し、この症候群を起こします。思春期と若い成人によくみられます。大腿前部にある大腿四頭筋のアンバランスな筋力、膝蓋骨亜脱臼、膝蓋骨外傷、半月板損傷などが誘引になります。階段の昇り降りが困難になったり、長時間座った後の第1歩を踏み出すのが大変になることがあります。他の症状としては、膝の音、膝の不安定感、膝の突然のロック状態などが挙げられます。また、膝蓋骨を押すと圧痛があります。

・靱帯の損傷 (ligament injury)
 靱帯は、骨と骨を結合して関節を形成する働きがありますが、膝の靱帯は前述したように4つの靱帯で構成されています。4つの靱帯の損傷では内側側副靱帯と前十字靱帯の損傷の頻度が高く、また重要です。靱帯の損傷および断裂が起こると、痛みは比較的早く出てきますが、痛みの部位を同定するのが困難なことがあります。十字靭帯の場合は膝の奥深い痛みを感じます。側副靱帯損傷は膝の内側か外側に痛みが起こり、損傷を起こしたその部分が痛いのが普通です。また、靱帯断裂時には何かが切れたような音がすることもあります。
膝の靭帯の損傷は普通は安静時でも痛く、腫れたり熱感を伴います。膝を曲げたり、体重を掛けたり、歩くと痛みがひどくなります。靱帯の損傷には部分断裂と完全断裂がありますが、完全断裂の場合は手術の適応になることがあるので整形外科医の受診が必要になります。

・半月板損傷 (meniscus tears)
 半月板損傷は、速く激しい動きをしている時や膝をひねったり、過度に屈曲した時に起こります。半月板損傷を起こすと、何かが切れたような音を感じることがあります。膝の痛み、腫れ、熱感などが症状です。膝が突然動かなくなったり、膝関節が不安定になることもあります。ある程度は診察でも分かりますが、確定診断にはMRIを使用します。

その他の膝の外傷性疾患

・ 膝を急に使ったり捻ったりすると、膝の捻挫や肉離れ(sprain and strain)の原因になります。症状は靱帯の損傷に比べて軽いのが普通ですが、肉離れ(pulled muscle)を起こすと内出血を起こし、皮膚の色が変わることがあります。

・ 腱炎(tendinitis)
腱の炎症のことですが、主に膝の前部で、膝蓋骨の下(膝蓋骨腱)と膝の後部の膝窩の腱に起こりやすいのですが、通常はジャンプなどの負荷が掛かると起こります。腱炎は外傷以外にも、使いすぎ、老化による腱の弾力性低下によって起こったり、あるいは内科的疾患、例えばリューマチ様関節炎、糖尿病などでも起こります。腱炎は通常痛みがあり、その腱に圧痛があると診断できます。

・ 骨折(fractures)
交通事故、フットボールなどの激しいスポーツで膝の中の骨が折れることがあります。膝の中の骨折は重症の場合があり、外科手術が必要になることもあります。

・膝蓋軟骨軟化症(chondromalacia patellae)
膝蓋骨の内側の軟骨が柔らかくなる病気ですが、深い膝の痛みと硬直化を起こします。膝蓋大腿関節痛症候群と同義です。

・滑液包炎(bursitis)
液体の入った袋状の滑液包の炎症ですが、滑液包は通常関節近くにあって、腱・筋肉と骨の間の摩擦を和らげる役割をしています。膝に繰り返し圧力が掛かったり、使いすぎや外傷で起こります。

・ ベーカー嚢腫(Baker's cyst)
膝の後ろにできる液体の貯留した膨れのことですが、痛みは中程度で徐々に膨らんできます。他の炎症疾患(例えば関節炎)に伴うことがあります。子供に多く、大人の場合は主に膝の関節包のヘルニアによって起こります。

子供に多い膝の病気

 思春期の女子から若い女性に多い膝蓋骨亜脱臼(patellar subluxation)、中学生の男子に多い膝の下(脛骨の上面=粗面)が痛くなるオスグッド病(Osgood-Schlatter disease)は、階段の昇り降りやジャンプをすると悪化します。思春期の男子に多く、膝前部の痛みで、階段を降りる時や走る時に痛くなる前述したジャンパー膝。大腿骨近位骨端線で骨端部が頸部に対して後方に滑る疾患で、膝に痛みが起こることがある大腿骨頭すべり症(slipped capital femoral epiphysis)。離断性骨軟骨炎(osteochondriis dissecans)は関節内の骨軟骨の一部が外傷などで遊離する病気で、場所が同定できない痛みや膝が突然動かなくなったり、腫れが起こります。

外傷性膝痛の処置

一般的注意:
1.安静にして、痛みを悪化させるような動きは止める。特に、体重が掛かるような行為。
2.アイスパックを使用。初日は頻回に(1時間おき)、翌日から1日4回程度。
3.足を挙げて、むくみを和らげる。
4.膝を弾力包帯などで軽く包む。
5.イブプロフェンのような抗炎症鎮痛薬を取る。
6.寝る時に枕を膝の下や間に置く。

次のような場合は、医師に相談して下さい:
1.痛くて立てない時。
2.激痛がする時。
3.膝が自然に崩れたり、音がしたり、動かなくなったりする。
4.膝の形がいびつになっている。
5.発熱、発赤、熱感、ひどい腫れのある時。
6.ふくらはぎに痛み、腫れ、感覚麻痺、しびれ、青あざがある時。

サンディエゴの地元日系紙「ゆうゆう」の2005年10月1日号に掲載

 
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