| 第44回 月経前症候群(PMS = premenstrual syndrome) |
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生理前に不機嫌になったり、怒りやすくなったことはありませんか? あるいは、生理前に頭痛や腰痛、下腹痛が激しくて痛み止めを服用したことはありませんか?―――― それは、今回説明するPMS (月経前症候群) かも知れません。
PMSは出産可能年齢の女性の7~8割近くの女性が1回は経験すると言われています。そのうち3~4割の女性は症状が強いために日常生活にも支障が出るほどで、1割程度の女性は仕事や家事も出来ないぐらいになると考えられています。実際どのくらいの女性がPMSに悩まされているのかを知るのは極めて困難で、報告によっては4割ぐらいの女性にしか影響していないと見積もっているものもあります。この違いは、PMSに関係のある症状が非常に多いのと、PMSを診断する検査方法が無く、診断が医師の判断だけに任されているからです。 PMSとは? PMSは月経前5~11日から月経直後またはその暫く後まで続く、一連の症状のことをいいますが、その症状の種類は150以上もあると言われています。特に20代後半から40歳前半の女性に多く、思春期には少なく、閉経後は月経そのものが無くなるのでPMSも起こらなくなります。 以前はホルモンのアンバランスでPMSが起こると考えられていましたが、現在では、正常な月経サイクルで起こり、ホルモン異常は無いと信じられています。PMSの原因は未だ不明ですが、セロトニンという神経伝達物質の変調によって起こるのではないかとの報告もあります。社会的、文化的、生物学的、心理学的な要素も関係があり、その発生機序は極めて複雑です。 PMSの症状 PMS特有の症状というものは特にありませんが、頻度の高い症状は、頭痛、手足のむくみ、腰痛、腹痛、腹部膨満感、筋肉痛、筋肉収れん、乳房痛、体重増加、ヘルペスの再発、にきびの悪化、吐き気、便秘、下痢、食欲増進、生理痛、匂いや光に対する過敏性の増加などですが、それ以外にも、不安、パニック、精神混乱、集中力低下、物忘れ、判断力低下、うつ気分、精神的過敏性・敵対心・攻撃性の増加、罪悪感、自身喪失、性欲の低下、支離滅裂、気分のむら、疲れ、めまい、睡眠障害などの症状がPMSに関係あるとされています。 PMSの診断 PMSを診断するための診察や血液検査は存在しませんが、PMS以外のPMSに似た疾患の除外をするため、子宮頸癌検査 (Pap smear) や甲状腺機能検査などの検査が必要になることがあります。また、精神科疾患が考えられる時は精神科による診察も必要です。診断の補助になるものとして、症状日記があります。これは、月経サイクルと共にいろいろな症状を一つ一つの症状の重症度、期間を最低3カ月間記録するものです。 治療 基本的には適度の運動とバランスの取れた食事が必要です。それで改善しない時は食事内容を変えることもあります。例えば、カフェイン・アルコール・たばこ・チョコレートの制限、あるいは1回の食事量を減らしたり、回数を増やしたり、砂糖分を減らすことによって症状が改善する女性もいます。但し、これは必ずしも誰にも効果がある方法ではなくて、飽くまでも「効果がある女性もいる」程度だと考えてください。サプリメントとしてビタミン6、ビタミンE、カルシウム、マグネシウムが使用されることもありますが、効果の程はまちまちです。 頭痛、腰痛、腹痛、乳房痛などの痛みにはプロスタグランディン阻害薬であるアスピリン、イブプロフェン (商品名=モトリン、アドビル) が使われます。水分の貯留で体重増加のある女性には利尿剤が処方されることがあります。不安やうつ気分のある女性には精神安定剤が使われますが、身体依存性があるので「あまり使用してはいけない」と警告する医師もいます。うつ傾向の強い女性にはセロトニンに関与する抗うつ薬がよく使用されます。経口避妊薬はPMSに対する効果は一定していません。 その外にも、ゴナドトロピン分泌ホルモンや他のホルモン剤が使用される時がありますが、それらのホルモン剤の使用に関しては賛否両論があり、医学界でも評価は一定していません。PMSの正しい診断と症状に対する適切な治療 (対症療法) が大切なのです。 その他の治療 西洋医学的な治療法以外にも、鍼灸、漢方、ヨガ、ハーブ、心理療法、マッサージ、アロマセラピー、あるいは民間療法などの様々な治療法が多くの女性に利用されていますが、偏った研究結果に基づいただけの極めて異端な治療法もあるので要注意です。一方で、ビタミン6大量投与療法は神経症状などの副作用を起こす可能性もあり、必要以上の量を服用することは危険です。どの治療法が自分に適しているかを知るのは簡単ではありませんが、極端に言うと、害にならない治療法は、例え結果的に効果が無かったとしても安全であることには違いありません。 サンディエゴの地元日系紙「ゆうゆう」の2004年3月1日号に掲載。
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