| 第26回 夏と病気 (熱による病気) |
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日中の気温が上昇し、焼きつくような日差しが多くなり、いよいよ本格的な夏到来ですが、日中スポーツを行う人にとっては要注意の季節です。特にマラソン、トライアスロン等過酷で長時間行うスポーツは、熱と脱水による健康障害を受けやすくなります。熱による疾患は、程度の軽い順から、熱失神(heat syncope)、熱痙攣(heat cramps)、熱ばて(heat exhaustion)、熱射病(heat stroke)とありますが、いづれも外界の熱に対し、体の体温調整ができなくなった時に起こります。
体温の調整 外界の温度(気温)が高くなると、身体は主に発汗と気化によって体温を調整します。気温が低い間は、体温の大部分は外界に直接放散しますが、気温が高くなると、体温の放散の程度は下がってきます。摂氏37.2度以上になると、体温はもはや外界には放散しないで、逆に外界の温度が体温に影響するようになります。気温が低い間は、発汗と気化による体温調節の役割は2割以下ですが、気温が高くなってくると、体温調節の中心的な役割を担うようになります。高温下で、激しい運動をすると、発汗量は1時間当たり2.5リットルにも達することがあります。 もし、なんらかの理由で、発汗と気化の機能が障害されると、体温の調整がうまくいかなくなり、体温上昇による健康障害を受けます。低血圧、脱水、心臓の機能低下、肥満、抗ヒスタミン剤(アレルギーに使用される)や向精神薬、ある種の抗高血圧薬等の服用、あるいはアルコールの飲用等は、熱による病気のリスクになります。 熱失神(Heat syncope) 激しい運動を2時間以上した後に急に意識を失うような場合、熱失神が考えられます。これは末梢の血管が拡張して、血圧が急に下がるために起こります。皮膚温は低く、湿り気があり、脈は弱くなっています。治療方法はただちに、涼しい場所に移動させ、水分の補給をします。 熱痙攣(Heat cramps) これも激しい運動の後に起こりますが、水分と塩分の補給不足が関係しています。発汗による水分不足を塩分の入っていない水分だけで補うとなりやすくなります。筋肉痛が起こり、2-3分程度の筋肉痙攣も起こります。皮膚は湿り気があり、皮膚温は低くなっています。体温はやや上昇しているか、普通です。ただちに、涼しい場所に移動し、塩分の入った飲料水(例えばGatarade =ゲータレード, ポカリスウェットのようなスポーツドリンク、あるいは、1ガロンの水に小さじ4杯程度の食塩を入れた食塩水)を飲用します。 熱ばて(Heat exhaustion) これは、「熱ばて」という言葉が意味するような、熱で単に身体が“ばてる”軽い状態を表しているのではなく、もっとシリアスな身体の状態を表しています。高温多湿の環境下で長時間激しい運動を行い、水分と塩分が十分補給なされなかった時に起こります。体温は上昇し、頭痛、疲労、不安、ある種の精神症状、熱失神、熱痙攣等がみられることがあります。対処の仕方は、熱痙攣と同じですが、より積極的に水分と塩分の補給が必要です。もし、発汗が止まると、熱射病に進行します。 熱射病(Heat stroke) これは熱による健康障害で最も重症なものです。高温下で、マラソンやトライアスロンのような激しい運動を続け、水分と塩分補給が十分でなく、発汗が止まってしまうと、体温(直腸体温)は上昇し続け(摂氏41度以上)、脳、心臓、肝臓、腎臓等の臓器の機能が障害を起こし、最悪の場合は死へと至ります。精神的混乱、下痢、眼のかすみ、けいれん、吐き気、嘔吐、意識障害等の症状がおこります。皮膚温は上昇し、皮膚は当初湿り気がありますが最後には乾燥してきます。熱射病は救急疾患ですので、すぐに911を電話し、救急車の出動を要請します。救急車の来る間、体温を下げることに全力をあげます。衣類を脱がし、水をスプレーしたりしますが、水の中に身体を浸けてしまうのはだめです。熱ざましも効果はありません。初期の熱射病と熱ばてとの区別は困難ですが、いずれにせよ救急室に行くのが懸命です。 高齢者は、激しい運動をしないでも、気温が異常に上昇すると熱射病に罹患しやすくなります。高齢者はパーキンソン病の薬、利尿剤、抗コリン薬等の薬を服用している人も多く、こうした薬の服用は熱射病のリスクになります。1995年7月には、シカゴだけでも465人の高齢者が熱射病等の熱障害で死亡しました。 乳幼児も高齢者と同じように高温環境下に弱く、脱水と電解質の不足から、熱障害を受けやすくなります。その一例が、炎天下の車の中に長く放置された乳児が、死亡するような場合です。 熱による病気の予防 高温の環境下で、激しい運動を行う時は、十分の水分と塩分補給を行ってください。また、気温がある一定以上になると、競技スポーツは中止になる時があります。抗ヒスタミン剤等の薬を常用している患者さんは、医師の助言を受けてください。高齢者と小さな子供は高温下では、脱水しやすいので、熱による健康障害を受けやすくなります。長時間赤ちゃんをビーチ等に連れて行くのも要注意です。 サンディエゴの地元日系紙「ゆうゆう」の2002年7月1日号に掲載。
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