| 第113回 便秘(Constipation) |
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便秘で悩む人は多く、誰もが一度は便秘を経験します。大抵の人は、市販の下剤を使用したり、野菜果物を多く取ることで便秘を解消しますが、腹痛、腹部膨満、痔 (じ) などが生じると医療機関を受診するようになります。 アメリカでは400万人以上の人が慢性的な便秘に悩まされていますが、女性、高齢者に多く、妊娠・出産後にも頻度が高くなります。
便秘の定義
一口に便秘と言っても、排便回数には個人差があり、中には1日に3回も排便する人もいれば、1週間に3回程しか排便しない人もいます。1週間に3回以下の排便で、排便困難、腹痛、排便痛、腹部の膨満などの症状を伴う時、便秘と呼びます。便秘時の便は固く、乾燥し、細くなっています。
便秘のしくみ
食物残渣 (ざんさ) が大腸を通過する時、水分が吸収され、便が形成されていきます。大腸は蠕動 (ぜんどう) によって便を直腸の方へ移動させ、便が直腸に到達する頃には便は固形状になり、ほとんどの水分が吸収された状態となっています。もし、大腸が水分を過度に吸収したり、大腸の蠕動が低下すると、便はより乾燥して固くなり、移動しにくくなり便秘が起こります。
便秘の原因
便秘の原因の大半が、食事中の食物繊維の不足、水分不足、運動不足ですが、便秘の原因を個別に解説してみます。
1.食物繊維の不足 ―― 便秘の最も一般的な原因ですが、同時に脂肪を取り過ぎていることも原因になります。食物繊維は果物、野菜、穀物に多く含まれています。食物繊維は水分を吸って、便をふっくらとさせ、便の通過と排便を容易にします。加工食品、ファーストフードをよく食べる人は食物繊維が不足します。
2.水分の不足 ―― 水分が不足すると便が固くなります。十分な水分を取ると便がふっくらし、便の通過が良くなります。但し、カフェイン入りの飲み物 (コーヒー、ソーダ類) やアルコール飲料は脱水を促進し、便秘が更にひどくなる可能性があるので要注意です。
3.運動不足 ―― 特に運動量の少ない高齢者、病気やけがで運動できない人は便秘になりやすくなります。
4.薬の副作用 ―― 薬を常用している人は、薬の副作用による便秘の可能性があります。準麻薬系 (Vicodinなど) の強力な痛み止め、アルミやカルシウムの含まれた制酸剤、カルシウムチャネル阻害薬などの抗高血圧薬 (Norvascなど)、パーキンソン病用の薬、抗けいれん薬、抗うつ薬、鉄剤、利尿薬などが原因になります。
5.生活習慣の変化 ―― 妊娠、高齢、旅行など。
6.下剤の常用 ―― 下剤を長期使用すると、下剤なしでは排便できなくなり、便秘が更にひどくなる可能性があります。
7.便意の無視――便意があるのに排便をしないでいると、最後には排便の必要性を感じなくなってきます。
8.基礎疾患 ―― 多発性硬化症、パーキンソン病、脳卒中、脊椎損傷、糖尿病、尿毒症、高カルシウム血症、甲状腺機能低下症、アミロイド-シス、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症など。
9.大腸および直腸の病気 ―― 腸閉塞、腸の周りの癒着、憩室炎、腫瘍、大腸や直腸の狭窄、ヒルシュプルング病、がんなど。
10 腸の機能性障害 ―― 過敏性大腸炎など
11 他の原因 ―― 大腸の活動低下による便の通過遅延や、肛門・直腸周囲の筋肉の弛緩障害で排便困難。
便秘の診断
便秘の診断は、基本的には問診と診察で行われますが、排便の回数、便の性状、便秘の期間、重症度、患者さんの年齢、血便の有無、急な便通の変化、体重減少などの有無をみて、総合的に判断されます。ほとんどの人は精密検査の必要はなく、食事と運動療法で改善します。 重度の便秘、急な排便の変化、血便、高齢者などでは精密検査が必要になります。精密検査としては、腹部レントゲン、結腸直腸通過テスト、肛門直腸機能テスト、排便造影、結腸造影、S状結腸鏡、大腸ファイバー (大腸カメラ) などがあります。場合によっては CT や MRI なども行われます。
食事と生活習慣の改善による便秘の治療
便秘の治療は、原因、重症度、便秘の期間などにより異なりますが、多くの場合、食事内容と生活習慣を変えるだけで改善します。ある病気が原因になっている場合は、その病気の治療を、また薬物による副作用の可能性がある場合は、使用薬物の変更などをまず試みます。 食事では、1日当り20〜35グラムの食物繊維を摂取するようにします。豆類、穀物 (全粒粉)、新鮮な果物や野菜 (アスパラガス、もやし、キャベツ、にんじん等) などを多く取り、食物繊維の少ない肉、アイスクリーム、チーズ、加工食品などを控えます。 水分を十分取ります。他に、果物・野菜ジュース、スープもよく取り、運動を十分します。排便は余裕を持って行うようにし、便意のある時は速やかに排便する習慣をつけます。
薬物治療(下剤)
軽い便秘の時は下剤を使う必要はありません。食物繊維を十分摂取し、生活習慣も変えた後でも便秘が続く場合は、一時的に下剤や浣腸を使ってみます。下剤の使用中は十分な水分を取ることも大事です。下剤の使用は短期間に限り、長期使用する時、腹部が異常に膨張している時、腹痛や吐き気の伴う時などは医師を受診して下さい。
★膨張性下剤 ―― 食物繊維サプリメントで最も安全な下剤です。大腸の中で水 分を吸収し、便を膨らませます。市販されているものとしては Metamucil、Fiberall、Citrucel、Konsyl、Serutan、Perdiem などがあります。これらのサプリメントを使用する時は十分な水分を取って下さい。水分を十分取らないと、腹部の膨満を悪化させ、腹痛の原因にもなります。
★便軟化剤 ―― 便を柔らかくするこの下剤は出産後や手術後によく使われます。 Colace、Surfak などがあります。あまり排便するのに気張ってはいけない人に向いています。
★刺激性下剤 ―― これは大腸の筋肉に規則的な収縮を起こし、排便を促します。 Corretol、Dulcolax、Ex-Lax、Purge、Feen-a-Mint、Senokot などの商品名で知られています。依存的になるので、長期使用は避けます。ビタミンDやカルシウムの吸収に影響の出る場合があり、フェノールフタレインが含まれている下剤は発がん性の可能性もあります。
★浸透性下剤 ―― この種の下剤は、浸透圧によって腸管内の水分量を増加し、 便に水分を与え、便の通過を改善します。高血圧、腎機能障害、心不全のある人はこの種の下剤は使えません。Cephulac、Sorbitol、Miralax といった商品があります。
★潤滑性 (粘滑性) 下剤 ―― 便に潤滑を与え、大腸内を通過させやすくします。 ミネラルオイルが最も一般的です。Fleet や Zymenol という商品名でも売られています。
★塩類性下剤――腸管内に水分を保ち、便が移動しやすくなります。Mild of Magnesia、Haley’s M-O などの商品名で知られています。長期使用すると電解質バランスが狂うことがあります。小さな子供や腎機能の低下している人などは要注意です。
★クロライド・チャネル・アクティベーター ―― 腸管内の水分を増やし、蠕動 を増やし、排便を促します。Amitiza という商品で慢性特発性便秘症の治 療薬として認可されています。処方箋 (せん) による下剤です。
他の治療法
食事・運動療法や下剤で効果のない場合、あるいは長期使用しないといけない場合は、腹部のマッサージ、鍼灸、ハーブや漢方、バイオフィードバックなどを試みます。重度の便秘は、その原因次第では手術の対象になることがあります。
便秘の合併症
痔 (排便で力むので)、切れ痔 (裂肛 ― 便が固くて肛門周囲の皮膚が切れる)、血便、直腸脱 (腸の一部が体外へ出る)、便秘がひどくなると腸や直腸のほとんどが便で詰まってしまい、自力で排便が困難になります。これを宿便または滞留便といいます。特に、子供や高齢者に多く起こり、ミネラルオイルで宿便を柔らかくし、指で肛門から便を掘り起こしていきます。これは医療機関で行われます。
便秘の予防
食物繊維の多く含まれた食事をする。新鮮な野菜果物を豊富に取る。脂肪、砂糖、加工食品、チーズ、アイスクリームなど食物繊維のほとんど含まれていない食品を避ける。十分な水分を取る。定期的に運動をする (1日最低30分程度)、便意があれば速やかに排便をする。食物繊維サプリメントを取る。刺激性の下剤はあまり使わない ―― などです。
サンディエゴの地元日系紙「ゆうゆう」の2010年1月1日号に掲載
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