| 第112回 新型インフルエンザ(2009H1N1)についての最近の情報 |
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今年6月1日号のゆうゆうのコラム「アメリカ健康ノート106回」で、新型インフルエンザについての解説をしましたが、この半年の間に新型インフルエンザを取り巻く状況は大きく変化しました。全世界で感染者が著しく増加し、北半球では日本やアメリカを始め、死亡者が若い人を中心に急増しています。 今回のコラムでは、CDC (米国疾病予防管理センター) の最新情報を基に、新型インフルエンザに関する情報をアップデートしてみましょう。
今年春以降の情況
メキシコから端を発した新型インフルエンザは、アメリカ、日本と世界中に瞬く間に広がり、特に、冬を迎えたオーストラリアやチリなどの南半球に波及しました。南半球で猛威を振るった新型インフルエンザは、9月以降、北半球の国々を襲っています。 アメリカでの感染者数は2200万人を超えたと推定され、日本でも11月のある1週間だけで140万人以上の人が感染したと発表されました。過去11週間でのアメリカでの入院者数は26,315人、死亡者数は1049人に上っています。そのうち、小児の死亡は138人を数え、その大半が4才以下です。(11月20日現在) アメリカでは人口の4分の1から半数の人が感染し、180万人が入院し、3〜9万人が死亡するという推測もされています。 現在、日米とも、医療機関を受診する人のインフルエンザ様疾患のほとんどが新型インフルエンザと考えられていますが、季節性インフルエンザの流行も予想がつかないので、遅かれ早かれ、季節性インフルエンザと流行が重なるのではないかと予想されています。
新型インフルエンザの予防接種
今年の春の流行以降、新型インフルエンザのワクチンが先進国諸国で製造され、日米ともに10月頃から病院などへの供給が開始され、優先順位に従って接種が始まっています。アメリカでは最終的には2億5000万回分のワクチンが供給され、アメリカ在住の人にすべて行き渡る予定です。 CDCの発表では、11月現在報告されている新型インフルエンザ・ウイルスは、ワクチン製造に使用したものと類似のものだということです。
ワクチンの種類と接種
現在、アメリカで使用されている新型インフルエンザ・ワクチンには、注射による不活化ワクチンと鼻スプレーによる生ワクチンがあります。注射の場合、3才未満は0.25ml、3才以上は0.5mlを接種します。鼻スプレーは2才以上50才未満の健康な人だけが対象になります。 10才以上は1回のみ、6か月以上10才未満の小児は4週間の間隔を開け、2回受けることになっています。予防接種を受け、免疫がつくのは約2週間後です。予防接種を受けても新型インフルエンザに100%かからないわけではありませんが、例えかかったとしても症状が軽くなると考えられています。また、新型インフルエンザの予防接種は、季節性インフルエンザに対しては何ら予防効果はありません。
ワクチン接種対象者
新型インフルエンザ予防接種の対象者は、後述する接種してはいけない人を除いて全員が対象になりますが、当面供給される量に制限があるため、接種の優先対象者 (新型インフルエンザで重症化しやすい人など) が決められています。当面の優先者は下記の通りです。 季節性インフルエンザと違って、新型インフルエンザは65才以上の人は感染しにくいので、65才以上の人は当面優先者の中には含まれていません。年齢が若く、基礎疾患のない健康な人でも重症化することが多いのが新型インフルエンザの特徴なので、若い人が主な対象者になっています。
―妊婦 ―生後6か月以内の乳児と一緒に暮らしているか、世話をしている人 ―医療機関で働く人 ―生後6か月から24歳までの人 ―25歳から64歳の人で、ある特定の病気のある人 (喘息、てんかん、脳 性まひなどの神経学的異常、発達障害、慢性肺疾患、心不全・ 先天性心疾患・虚血性心疾患などの心臓病、血液疾患、内分泌疾患=糖 尿病など、腎臓疾患、肝疾患、代謝性疾患、免疫低下など。高血圧や 高脂血症は含まれていません)
供給量が増えてくるに従って、25才から64才で健康な人、そして65才以上の人と接種対象範囲が随時広がっていきます。 今年の春以降、新型インフルエンザにかかり、確定診断を受けた人は予防接種を受ける必要はありません (万が一、接種を受けたとしても害にはなりません)。簡易テストや症状だけで「新型インフルエンザの疑いがある」と言われた人は、新型インフルエンザの診断が確実ではないので、接種を受けてください。
予防接種が受けられない人
注射による接種が受けられない人 ―6か月未満の乳児 ―鶏卵に重症のアレルギーのある人 ―過去の季節性インフルエンザ・ワクチンに重症のアレルギーのあった人 ―過去にインフルエンザワクチンを受けて、6週間以内にギランバレー症 候群になった人 ―中症以上の発熱性の病気のある人 (その病気が治るまで待ちます)
鼻スプレーよる接種が受けられない人 ―2才未満及び50歳以上の人 ―妊婦 ―慢性疾患などの病気のある人 ―重度の免疫低下の人と接触のある人 ―長期アスピリンを服用している18才以下の小児
予防接種の副作用
新型インフルエンザ・ワクチンの副作用は、これまでの季節インフルエンザ・ワクチンと同様に製造されているので、副作用も季節インフルエンザ・ワクチンと同様です。 注射による副作用は、注射部位の痛み、腫れ、赤み、微熱、筋肉痛、咳、寒気などで、接種後比較的早く起こり、1〜2日で治ります。重篤な副作用はまれです。 鼻スプレーによる副作用は、小児の場合、鼻水、喘鳴 (ぜんめい)、頭痛、嘔吐、筋肉痛、発熱などで、大人は鼻水、頭痛、咽頭痛、咳などです。重篤な副作用はまれです。
抗ウイルス薬治療の対象者
新型インフルエンザにかかっても、症状が軽い場合はタミフルなどの抗ウイルス治療は必要ありません。多くの人は自宅での休養、十分な水分摂取などで対処できます。 アメリカで抗ウイルス薬治療の対象になる人は、入院が必要な人、2才以下の幼児、65才以上の人、妊婦、出産後2週間以内の女性、喘息や糖尿病などの特定の疾患または免疫低下の病気のある人 (合併症のリスクの高い人)、19才以下で長期アスピリンを服用している人、症状が中程度以上の人などです。 通常、発症から48時間以内の服用が望まれますが、適応があれば48時間を過ぎていても処方されます。インフルエンザ簡易テストでのテスト感受性は1〜7割程度なので、簡易テストの結果いかんに関わらず、臨床的にインフルエンザが疑われ、服用の適応があれば抗ウイルス薬治療が開始されます。新型インフルエンザの確定診断は軽症の場合は行われません。
感染者と家族の自宅待機期間
インフルエンザ様症状 (発熱、咳、鼻水、咽頭痛、筋肉痛など) のある人は、解熱剤の使用なしで、解熱して24時間を経過するまでは自宅待機が必要です。その後は、職場や学校に戻っていいことになっていますが、咳やくしゃみのある場合は、極力ウイルスを撒き散らさないように気をつけましょう。口や鼻をティッシュなどでカバーし、その後、手をよく洗うか、アルコール入りの消毒液で消毒します。また、喘息や糖尿病などリスクの高い人が職場や学校にいる場合は、極力その人たちに近づかないようにします。 ウイルスの体外排出量はある程度発熱と相関があり、発熱の高い最初の1〜2日に最もウイルス排出量が多いと考えられています。解熱しても、ウイルスの排出量がゼロになるわけではありませんが、職場や学校のように、周りの人が健康であれば感染する割合は低くなります。ウイルスの体外への排出がゼロになるのは通常7〜10日程度です。 ただし、患者さんと接触のある医療関係者、5才以下の子供や65才以上の高齢者と接触のある人、喘息や糖尿病などの特定の病気のある人と接触のある人などは、発症から1週間は職場に復帰できません。1週間を経ても、症状 (発熱以外でも) の続く場合は症状が改善するまで復帰を延期します。 家族に新型インフルエンザに罹患している人がいても、本人に発熱などの症状のない家族は自宅待機する必要はありません。ただし、咳やくしゃみをする場合は上述のように口や鼻をカバーし、手洗いを励行しましょう。発熱などインフルエンザ様症状が出始めたら、会社や学校を休んで自宅待機してください。
サンディエゴの地元日系紙「ゆうゆう」の2009年12月1日号に掲載
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