| 第106回 新型インフルエンザ(豚インフルエンザ=Influenza A(H1N1)=swine influenza) |
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今年4月から、メキシコ及びアメリカで新型インフルエンザ (Influenza A (H1N1)) が流行り、現在世界を席巻しています。日本でも5月16日現在、すでに21人の国内感染者が確認され、アメリカでは47州で4,714人の感染者が報告され (疑いの高い人も含む)、4人が死亡しています。 幸いなことに、病原性は普通の季節性インフルエンザと大差ないようなので、過度な反応をしたり、恐怖心を持つことなく、冷静に行動することが望まれます。
新型インフルエンザ(新型インフル)
3月下旬、サンディエゴ郡で10才の少年がインフルエンザに罹患し、これが後にH1N1という亜型をもつ新型インフルであることが判明しました。この少年が新型インフルの第一感染者なのですが、実際にはこれよりも半月程度早く、メキシコで「遅い季節性インフルエンザ」の流行があり、後にアメリカのCDC (疾病予防センター) によってこれが新型インフルの流行として確認されています。メキシコでの新型インフルの流行がどのようにしてアメリカに入ってきたのかは現時点では不明ですが、その後、瞬く間に世界中へと広がっていったのです。 新型インフルは当初、北米の豚由来のインフルエンザウイルスに似ているため、豚インフルエンザ (swine influenza) と名付けられました。しかし、その後の研究で、このウイルスは北米の通常の豚由来のインフルエンザウイルスとは異なる、ヨーロッパやアジアで見られる豚由来の遺伝子が2つ、高病原性ではない鳥由来の遺伝子が1つ、それに人間由来の遺伝子の計4つの、出所の異なる遺伝子が融合して出来たものだということが分かっています。
A型インフルエンザ
インフルエンザにはA型、B型、それにC型の3種類の型があります。そのうち、世界的な流行を起こすのはA型です。世界が震撼している高病原性の鳥インフルエンザもこのA型なのです。インフルエンザは、人間だけでなく、豚や鳥などの動物にも感染し、主に豚の体内で、人間由来のウイルス、鳥や豚由来のウイルスが混ざり合って、新しいインフルエンザウイルスが誕生します。新しいA型インフルエンザウイルスが登場すると、それに免疫のない人は次から次へと感染し、多くの死者が出てしまいます。1918〜19年のスペイン感冒の時、世界中で4〜5000万人もの死者が出ました。20世紀にはこれ以外にも2回も大きな世界的流行があり、アメリカでは豚インフルエンザによるヒトへの感染が1976年と1988年に起こっています。 A型インフルエンザウイルスはその表面にH蛋白 (ヘマグルチニン) とN蛋白 (ニュ-ラミダ-ゼ) が存在し、その組み合わせによってH1N1とか H3N2などの亜型を持つA型インフルエンザが作られるわけですが、前述したスペイン感冒と今回の新型インフルエンザは共に同じH1N1です。スペイン感冒のH1N1インフルエンザは当初、低病原性でしたが途中で、高病原性のものに変化したので、今回の新型インフルも今後注意が必要です。
新型インフルの症状
新型インフルの症状は、季節性インフル同様、発熱 (摂氏37.8度=華氏100度以上)、悪寒、咳、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、咽頭痛、頭痛、筋肉痛、食欲不振などですが、新型インフルの特徴として、これらの上気道症状以外にも、下痢・嘔吐などの胃腸症状を伴うことが3〜4割の確率であることです。感染して症状が出るまでの潜伏期間は2〜7日と考えられています。 感染性は、症状が出る1日前から症状が出現した後7日くらいまで続きます。幼少の子供はもっと長く感染性が続くことがあります。 呼吸苦、頻呼吸、チアノーゼ (皮膚が青くなる)、脱水、激しい嘔吐、意識混濁などの症状のある場合は、速やかに主治医に相談するか、緊急センターや救急室に行ってください。医療機関に行く場合は、新型インフルの可能性があることを伝え、指示に従ってください。 季節性インフルでは、5才以下の子供や65才以上の高齢者、妊婦、心血管系疾患などの慢性疾患のある人、老人ホームなどに滞在している人などが重症化しやすいのですが、新型インフルでは若い人の感染が多く、重症化もしているので、若い人でも用心が必要です。
新型インフルの検査
インフルエンザの検査としては簡易迅速検査がありますが、インフルエンザであることは診断できても、新型インフルであるかどうかは確認できません。また、簡易検査が陰性であっても、症状的に新型インフルが疑われる時は、新型インフルの遺伝子検査をします。簡易検査でA型インフルエンザが陽性の時は、新型インフルの可能性が高くなり、逆にB型インフルが陽性の時は、新型インフルの可能性は低くなります。いずれにせよ、遺伝子検査で新型かどうか確認が取れるまで、自宅待機が必要です。病院での隔離は軽症の場合は必要ではありません。
新型インフルの治療
症状が軽度の場合は、風邪の治療と変わりません。市販薬による症状に対する対象療法、休養と水分を十分取ることです。そして、何よりも大切なことは、自宅に待機することなのです。完全に症状が改善して24時間経過するか、症状が出てから7日経過 (どちらか期間の長い方) しない限り、職場や学校には行ってはいけません。また、外出も控えます。同居者がいる場合は、感染者がマスクをすることが大切です。濃厚な接触 (1〜2メートル以内) をする同居人もマスクをします。そして、お互いが頻繁に手を洗います。 インフルエンザによって重症の症状が出やすいリスクの高い人、あるいは症状の重い人は抗インフルエンザウイルス薬の適応になります。現在、 oseltamivir (Tamiful=タミフル) と zanamivir (Relenza=リレンザ) が治療薬や予防薬として使われますが、発症して48時間以内に服用を始めないと効果は減弱します。症状を改善するだけでなく、重症合併症の予防にもなります。症状が重い場合は、通常ではタミフルの対象にならないような1才以下の乳幼児にも使用可能です。新型インフルに対するワクチンは現在のところ存在しません。
新型インフルの予防
新型インフルは、感染者の咳、くしゃみによる飛沫によって他の人にうつります。この飛沫は、非感染者の口や鼻に入って直接感染するか(飛沫感染)、手すりやテーブルの上、あるいは衣類や体の一部に付着して、それを触った手で自分の口や鼻を触ることによって感染します(接触感染)。飛沫感染は、濃厚な接触をすることによってうつります。 インフルエンザウイルスは物の表面に付着して最大8時間程度は感染力を持っているので、予防のためには、頻繁に水と石鹸で手を洗うか (15〜20秒程度)、アルコール性の消毒液で手を消毒します。新型インフルは豚や豚製品を食べても感染するわけではありませんが、70度以上で加熱調理するとウイルスは死滅します。 日常生活で気をつけることは、人ごみを避ける。睡眠を十分取り、バランスの良い食事を取り、運動をして健康状態を保つことです。 マスクは、新型インフルが空気感染するわけではないので、健康な人が着用しても予防効果はほとんどありません。うがいも特にインフルエンザの予防法としてWHO (世界保健機構) や CDCから推奨されていません。 マスクを着用した方がいい人は感染者及び感染の疑いのある人。感染の疑いのある人と濃厚な接触をする家族や同居人、医療関係者、病人の世話人などです。また、重症化するリスクの高い慢性疾患のある人や妊婦もマスク着用の対象になります。マスクは正しく使わないと逆に感染を促進することになるので、マスクを外した後は、必ずすぐに手洗いをします。使い捨てマスクは1回使用する毎に捨てます。 新型インフルに罹った時のために、1週間家の外へ出なくてもいいように、風邪薬、アルコール系消毒薬、ティッシュペーパー、その他必要なものを買い揃えておきます。
感染者あるいは感染の疑いのある人が行うこと
咳やくしゃみをする時はティッシュで口を覆い、そして、使用後のティッシュは速やかに捨て、手を洗います。症状が出てから1週間か、症状がなくなって24時間以上経つまで (どちらか長期な方) 自宅にいてください。家族や親しい特定の人以外はなるべく会わないようにしましょう。医療機関に行く時は、なるべく行く前に連絡をし、指示に従ってください。軽症の場合は入院や隔離は必要ではありません。
以上の記事は、CDC や WHOなどで公表されている資料を基にして5月16日に書き上げたものですが、その後の新型インフルに関する情報のアップデートは以下のCDC と WHO のウェブサイトで行ってください。
CDC:http://www.cdc.gov/h1n1flu/ WHO:http://www.who.int/csr/disease/swineflu/en/index.html
サンディエゴの地元日系紙「ゆうゆう」の2009年6月1日号に掲載
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