| 第105回 良性発作性頭位性めまい(Benign paroxysmal positional vertigo = BPPV) |
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くるくる自分や周りが回わるめまいを回転性めまいと言いますが、この回転性めまいのうち、最も多い原因の一つが今回説明する良性発作性頭位めまい(BPPV)です。BPPV は頭の位置の変化によっておこるめまいで、聴力を失ったりするような重症のめまいではありませんが、何度も再発することがあるなかなかやっかいなめまいなのです。
BPPVの原因
耳は外から外耳、中耳、それに内耳の3つの部分から成り立っていますが、内耳には、蝸牛、前庭、半規管という聴力と平衡感覚に必要な重要な器官が存在します。前庭には、水平・垂直方向の位置を感知する卵形嚢と球形嚢が、そして前庭の隣には、回転を感知して体のバランスを維持する半円ループ状の半規管(3つ存在するので三半規管とも呼ばれます)があります。卵形嚢には、耳石という炭酸カルシウムで出来た小さな結晶が溜まっていますが、この耳石が卵形嚢の外に出て、半規管に移動してしまうことがありますが、これがBPPVの原因になるのです。 半規管の中は、有毛細胞と内リンパ液があり、内リンパ液の動きで、有毛細胞が回転を感知するのですが、耳石が半規管に存在すると、この内リンパ液の動きに異常が出て、有毛細胞が過敏になり、めまいが起こります。 耳石は三つの半規管うちの特に後部の半規管に入り、BPPV の大半は、この後部半規管に入り込んだ耳石が原因で起こると考えられています。 耳石が半規管に入り込む原因としては、長期ベッド上臥床、耳の手術、頭部外傷、耳の感染、耳の外傷、高齢などがあります。
BPPVの症状
BPPVの主な症状は、回転性めまい、吐き気、嘔吐、バランス喪失などで、難聴や耳鳴りは起こりません。これがメニエール病との大きな違いです。めまいは、頭の位置を変えた時に起こります。例えば、棚の上の物を取ろうとして首を後ろに反らした時、朝ベッドで頭の位置を変えたり、座った姿勢から横になったり、靴を履くために見下げたりする時にめまいが起こります。あるいは急に頭の方向を変えた時にも起こります。普通は、片方の耳に起こりますが、まれに両方の耳で起こることもあります。 めまいは、そうしたトリガーのあと5-10秒後に始まり1分以内におさまります。一旦おさまっても、また何回も起こりますが、最終的には大半の人が数週間以内に完治します。ただし一旦完治しても3分の1の人は1年以内に再発します。時には何ヶ月も続いて、嘔気と嘔吐のために脱水になることもあります。 BPPVはこのようにやっかいな病気ですが、めまいが原因で転倒したり、落下したりしない限り、重症の状態にはなりません。
BPPV と似た病気
めまいと共に次のような症状があればBPPV以外の原因を考えます。ひどい頭痛、発熱、複視、視力障害、難聴、発語障害、腕や脚の脱力、意識レベルの低下、失神、歩行困難、感覚異常、触覚異常、胸痛、徐脈などです。 他のめまいの原因としては、前庭神経炎、メニエール病、小さな脳梗塞による前下小脳動脈症候群(AICA syndrome)、自己免疫疾患、脳腫瘍(聴神経腫)、パーキンソン病、多発性硬化症、心臓病などがあります。
BPPVの診断
BPPVの診断は、問診と診察で行われます。特に、診察でのディックス・ホールパイク誘発テスト(Dix-Hallpike Test) が大切で、これでめまいや眼振が誘発されると、BPPVと診断できます。これは、診察台の上に座り、頭をどちらかの方向に45度回転させ、そして、後ろ向きに体を倒していって横臥姿勢になります。そして、めまいや眼振が起こるかどうかを調べるのです。医師の指導の元、安全に出来ます。 BPPV以外の可能性がある場合は、眼振の検査、MRIなどの画像診断などの検査が行われます。
BPPVの治療
治療の基本は、半規管内にある耳石を、元の卵形嚢に戻すことなのです。このためにいくつかの治療法があります。一番有名なのはエプリー法(Epley Maneuver)という治療法で、まず最初は、医師の指導を受けながら行います。1-2回やると8割以上の確率で症状が治まりますが、医師との治療の後、自宅でも数日間試みます。 この方法では、まずめまいのする方向に頭を45度回転させ、それからゆっくりと後ろ向きに倒れていって寝た姿勢になります。その後、その反対方向に頭を90度回転させます。それから、体全体をその方向に90度回転させ、頭を同方向に更に90度回転させます。それから体を起こします。それぞれの姿勢を最低30秒維持します。 治療をした夜、就寝する時は、リクライニングチェアに座るか枕をいくつか重ねて、頭部ないし上半身を45度程度上げた姿勢で寝ます。また、1週間程度は美容院や歯科医院で頭部を後ろにそらすのを避けたり、頭を過度に動かす運動(腹筋運動など)や上を見たり下を見たりする動作を避けます。めまいを起こす側で寝ないようにします。エプリ-療法は、2分半で1サイクルで、寝る前に3サイクルはしましょう。
治療上の注意事項
BPPVの可能性がある場合まず、医師を受診してください。BPPVの診断が確かであれば、エプリー療法の適応になります。まれに、耳石のあるのが後部半規管ではなくて、他の2つの半規管のいづれかに存在することがあります。そうするとエプリー法は効果がありません。 エプリー法のような治療法以外に、メクリジンなどの薬物治療もありますが、BPPVにはあまり効果はありません。どうしても内科的な方法で改善しない時は、外科的治療の適応になりますが、成功率は9割と高いものの、2-5%程度の確率で難聴になります。この方法では、骨のプラグを使い、内耳の一部をブロックします。
サンディエゴの地元日系紙「ゆうゆう」の2009年5月1日号に掲載
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