第72回 胸郭出口症候群(Thoracic Outlet Syndrome = TOS)

症状: 手や腕のしびれ、首、肩、腕の痛み

 

 35歳のPさんは、コンピュータープログラマーで週に23回は友人とバレーボールをします。右手指・腕のしびれが1ヶ月前に始まり、1週間前から首、肩、上腕の痛みも起こってきました。医師を受診したところ胸郭出口症候群と診断され、理学療法と自宅でのストレッチングを積極的に行い症状は徐々に改善していきました。

胸郭出口症候群(TOS)とは、腕に行く神経や血管が胸の出口の所で、圧迫されて起こる一連の病気です。首の脊髄から出てきた神経は、腕神経叢という神経の束を一旦形成して腕に出て行きます。また、鎖骨下動脈や静脈も腕につながって行きますが、両者とも胸から出て行くところ(胸郭の出口)で筋肉、骨、その他の組織で圧迫されることがあるのです。そしてその圧迫によっていろいろな症状を起こします。

 胸郭出口症候群になりやすい人は、交通事故で首に傷害を受けた人や特定の姿勢で長時間コンピューターを使う人ですが、水泳、バレ-ボ-ル、ウェイトリフティングのように腕を頭上によく挙げるスポーツをする人もリスクがあります。他に、体重増加や肺癌なども原因になります。

 症状としては、手指や腕のしびれ、首・肩・腕の痛み、腕の脈の減弱、腕や手指の蒼白や冷感などですが、腕を頭上に挙げたり重いものを持つと症状が悪化することがあります。

 診断は、主に問診と診察、それにいくつかの症状再現テストで行いますが、診断が困難な場合は、胸のレントゲン、神経伝導速度検査、筋電図、血管造影、CTなどの検査が必要になる時もあります。

 治療としては、ストレッチング、リハビリテーション、カイロプラクティックス、理学療法、マッサージ、温熱療法、筋力強化訓練、装具療法などがあります。痛みに対しては、非ステロイド系の鎮痛剤や筋弛緩剤など。ステロイドやボトックスの注射もあります。理学療法では、胸郭出口を開けるような運動を行います。

 日常生活で気をつけることは、腕を広げたり、腕を頭上に挙げるような行為を避ける、腕を頭よりも挙げて寝ない、重たい物は持たない、太った人は体重を下げる、重いものを回数多く持ち上げない、長時間座る時は悪い姿勢を避けるなどです。こうした治療で改善しない人は手術の対象になります。 

 記事中の患者さんは架空の患者さんです。

サンディエゴの日系紙「Lighthouse San Diego」に2008年10月16日号に掲載