第49回 突発性難聴 (Sudden Hearing Loss)

 

 

症状: 突然の難聴(片側)、耳鳴り、めまい

 

 42才のEさんは、朝起きると右側の耳がほとんど聞こえないのに気づき、救急室を受診しました。救急医から、突発性難聴の可能性があるということで、ステロイドを処方され、耳鼻科専門医を後日受診するよう指示されました。

 突発性難聴は、原因不明の片側の突然の難聴(両側に起こることもあり)ですが、耳鳴り、めまいなどの症状が伴うことがあります。難聴は、一時的な場合も、永久的な場合もあり、自然に回復する人も多くいます。アメリカでの頻度は、10万に5-20人程度。いろいろな年齢層で起こりますが、特に40才台に多く起こります。 

 

 原因に関しては、ウィルスの感染で起こるとする説、内耳の血液循環異常による機能不全だとする説、内耳の蝸牛粘膜の障害とする説、あるいは免疫が関与しているとする説などいくつかの説があります。ただ、突然に難聴を起こす疾患としては、髄膜炎、脳炎、多発性硬化症、梅毒、自己免疫疾患、聴神経腫、薬の副作用、鼓膜の外傷、側頭骨の骨折、脂肪塞栓症、白血病、メニエール病、癌の転移などがあるので、これらとの鑑別も重要になってきます。  

 聴力検査や耳鼻科的検査以外にも、CBC(血球算定), 血沈、凝固系の検査、空腹時血糖、電解質、コレステロール、甲状腺機能検査、梅毒検査、抗核抗体、コーチゾル、リューマチ因子などの血液検査が必要になる時があります。場合によっては、MRI(核磁気共鳴画像)やCTを行ないます。 

 

 治療は、はっきりした原因がわかっていないだけ困難ですが、ステロイドがよく使用されています。ステロイドは難聴の中程度の人に最も効果があり、重度の人にはあまり効果がないと考えられています。ステロイド以外には、血管拡張剤、利尿剤、抗凝固薬、ビタミン、造影剤、星状神経節ブロック、高気圧酸素療法、外科などありますが、自然治癒率が高いので、治療の効果を統計学的に判断するのは困難とされています。安静、便軟化剤、低塩食、禁酒、禁煙、騒音を避ける、寝るときは頭を高くする、などの一般的方法もあります。  

 突発性難聴の予後を推定するのは容易ではありません。発症後7-10日以内に治療を開始する人は予後が良く、逆に、発症時に重症な人、高音域に難聴のある人、両耳側に難聴のある人、15歳以下または60才以上の人の難聴は予後が悪いとされています。  

 

  記事中の患者さんは架空の患者さんです。

 

サンディエゴの日系紙「Lighthouse San Diego」に2007年1月16日号に掲載。