| 第75回 卵巣嚢胞(嚢腫)(Ovarian cysts) |
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卵巣嚢(のう)胞は、卵巣にできる水様や半固形状の液体が入った袋状のものを指しますが、卵巣嚢腫とも呼ばれています。卵巣嚢胞のほとんどが機能性または生理的嚢胞で、良性で排卵に伴って形成され、症状もなく、外科的手術の対象にもなりません。 上述したように、卵巣嚢胞のほとんどが機能性嚢胞と呼ばれるもので、この機能性嚢胞は、卵胞嚢胞(follicular cyst)と黄体嚢胞(corpus luteum cyst)の2種類に分けられます。 卵胞嚢胞は、排卵時に卵胞が破裂しないことによって形成されます。卵胞は排卵前に卵巣内で形成され、中で卵子が成熟します。排卵時に卵胞が破裂し、成熟した卵子が放出されるのですが、何らかの理由でこの卵胞の破裂が起こらないと、卵胞は卵胞嚢胞と変化していきます。通常、1~3カ月で消えてしまいます。 黄体嚢胞は、一旦卵胞が破裂して中の卵子が放出されて排卵をするのですが、破裂した卵胞の破れが治り、卵胞内に液体が溜って形成されます。黄体嚢胞も数週間後には自然に消えていきます。しかし、10cmくらいの大きさになるものや、出血したり、茎捻転を起こすこともあります。クロミド(Clomid)やセロフェン(Serophene)のような排卵誘発剤を使用しているとできやすくなります。 これらの機能性嚢胞は、生理がある年齢層の女性には比較的一般的にみられますが、閉経後の女性には排卵そのものがないためにほとんどみられません。 それ以外の卵巣嚢胞 ◆子宮内膜腫/チョコレート嚢腫(Endometrioma) 子宮内膜は子宮の内側に存在しますが、それが子宮外に転移すると、子宮内膜症という病気になります。子宮内膜の転移が卵巣に起こると、卵巣嚢胞を形成し、中に血が溜ります。チョコレート嚢腫という名前で呼ばれることもあります。この子宮内膜腫は性交時や生理時に痛むことがあります。 ◆嚢胞腺腫(Cysadenomas) これは卵巣表面の細胞から発生します。中には水様の液体やドロッとしたジェル状のものが入っています。大きくなって痛みを起こすものもあります。中に入っている液体の性状から、漿液性(しょうえきせい)嚢胞腺腫と粘液性(ねんえきせい)嚢胞腺腫に分けられます。 ◆皮様嚢腫(Dermoid cysts) 髪の毛、歯、骨など、他の体の部分の組織が入った卵巣嚢腫。他に、奇形腫、類皮嚢胞腫、デルモイドなどの名前でも呼ばれています。大きくなって痛みを起こすことがあります。 ◆多嚢胞性卵巣 卵子は卵胞の中で成熟しますが、卵胞が破裂しないで嚢胞として残ります。これが何回も繰り返されると、卵巣内にいくつもの卵巣嚢腫ができます。多嚢胞性卵巣症候群になると、男性ホルモンであるアンドロゲンホルモンの分泌過多を起こします。 卵巣嚢胞の症状 卵巣嚢胞があっても大半の女性は症状を訴えません。卵巣嚢胞の症状としては、下腹部の痛み、性交痛、生理痛、異常性器出血、下腹部の圧迫感、下腹部の詰まった感じ、腰や大腿部の鈍痛、吐き気、嘔吐、乳房の圧痛などがあります。卵巣嚢胞が捻じれると茎捻転という状態になり激痛がしたり、また、卵管を捻ってしまうこともあります。 痛みは普通、連続的な鈍痛ですが、激痛や性交痛として現れることもあります。生理開始直後や生理が終わる頃の痛みの原因、生理サイクルの乱れや、無月経の原因にもなります。 熱、嘔吐を伴う痛み。突然の激痛。目まい、立ちくらみ、元気がなくなったような感じがしたり呼吸症状がある時は、至急に医療機関を受診して下さい。 卵巣嚢胞の検査 検査は内診、超音波、CT、MRIなどを行ないます。他に血液検査として、血清hCG (妊娠していないことを確かめます)、CA-125、それにLH、FSH、estradiol、testosteroneなどのホルモン検査を行うことがあります。 CA-125は卵巣癌(がん)の腫瘍マーカーですが、卵巣癌でもこの値が高くならない場合や、卵巣癌以外でもこの値が高くなることがあったりするので、この値だけで卵巣癌の有無を決めることはできません。この検査の対象になるのは、通常、35才以上で卵巣嚢胞がある人です。 卵巣嚢胞の治療 機能性嚢胞は、通常、自然に消えてなくなるので治療は必要ありません。何度も卵巣嚢胞になる時は、経口避妊薬で排卵を抑え、機能性嚢胞の予防を行うことがあります。多嚢胞性卵巣症候群の場合はホルモン治療の対象になります。卵巣嚢胞が数カ月を過ぎても消えなかったり、嚢胞のサイズが大きくなっていく場合、超音波上での異常所見、痛みを伴うもの、閉経後の女性の卵巣嚢胞、5~10cm以上ある卵巣嚢胞、悪性の可能性がある場合などは外科的摘出術の対象になります。 外科的手術としては、最近はラパロスコピーによる手術が多く行われています。ラパロスコピーによる手術では、お腹に何か所か穴を開けて、内視鏡で腹腔内を覗きながら手術をしますが、卵巣嚢胞が小さい場合や良性の可能性が高い時に対象となります。卵巣嚢胞が大きかったり、悪性の可能性がある時は腹部を切開して摘出することになります。 サンディエゴの地元日系紙「ゆうゆう」の2006年10月1日号に掲載
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