第71回 無月経 (Amenorrhea)
無月経は、原発性無月経と続発性無月経に区別されますが、原発性無月経は16才まで初潮が起こらない場合。続発性無月経は、初潮は普通に起こっているのに、その後、3~6カ月以上月経が停止してしまった状態をいいます。今回は、この続発性無月経症について説明します

無月経の原因

 無月経を起こす原因は極めて多岐に渡りますが、一番多い原因は妊娠と閉経です。他の原因としては、激しい運動や長時間の運動、体重の極端な増減、ストレス、不安、避妊ピルや様々な薬(フェノチアジン、ブスルファン、サイクロフォスファマイドなど)、子宮内膜や子宮頚部の手術の後遺症などです。

 比較的頻度の低い原因としては、甲状腺・脳下垂体・視床下部の病気、クッシング病、早期卵巣機能不全(40才以下で発症)、多嚢(のう)胞性卵巣症候群などがあります。

 妊娠可能年齢で月経が無い時は、先ず、妊娠の可能性があるかどうか考えて下さい。45才以上の人であれば閉経かもしれません。競技スポーツへの参加、極端な体重の減少、受験勉強や大学での勉強、あるいは仕事・人間関係でのストレスのある人は、先ずそのことが無月経の原因かもしれません。因みに、月経が順調に起こるためには体脂肪は最低15~17%以上必要です。

無月経と関係のある症状

 無月経を起こす原因によって、いろいろな症状が伴うことがあります。例えば、甲状腺機能亢進症では、発汗過多、いらいら感、下痢、手や指の震え、甲状腺機能低下症では、うつ気分、便秘、乾燥肌など。多嚢胞性卵巣症候群が原因の場合は、多毛、クリトリスの肥大。脳下垂体の腫瘍が原因の時は、頭痛、視力障害、乳汁分泌。クッシング病だと顔の腫れや高血圧――といった具合です。

大切な問診と診察

 無月経の原因は8割以上は問診だけで分かると言われています。無月経の経過と、伴う症状の有無、既往歴などの問診、一般診察と婦人科診察が正しい診断に重要です。初潮から無月経になるまでの月経の経過・月経周期などの情報は特に大切です。妊娠の可能性、体重の増減、スポーツ・運動の参加、ストレスや不安の有無、服用薬、乳汁分泌、閉経の可能性、以前の出産後での多量の出血の有無について医師に正確に伝えて下さい。

最初に行う検査

 先ず、最初に行う検査としては、妊娠テスト、LH (黄体化ホルモン)、FSH (卵胞刺激ホルモン)、テストステロンなどのホルモン検査。プロラクチン(乳汁分泌ホルモン)レベル、甲状腺機能検査などがあります。LH が非常に高ければ閉経か早期卵巣機能不全。LHが10MIU/ml以上でLH/FSHが2:1以上であれば多嚢胞性卵巣症候群の可能性が高くなります。しかし、LH が低く、LH/FSHが2:1以下でも多毛などの所見があり、多嚢胞性卵巣症候群を疑う時はテストステロンやDHEAS (デヒドロエピアンドロステロン)のレベルを調べます。

プロゲステロン負荷試験

 上記の血液検査が正常な場合は「プロゲステロン(黄体ホルモン)負荷試験」による消退出血の有無を調べます。この試験は、黄体ホルモンであるメドロキシプロゲステロンを7~10日間服用するか、プロゲステロンを注射して、その後で出血が来るかどうか調べるのです。もし出血があれば(消退出血と呼びます)、無月経の原因は無排卵ということになります。無排卵性の無月経はストレス、極端な体重減少、多嚢(のう)胞性卵巣症候群、薬の副作用などで起こります。

 プロゲステロン負荷試験で出血が認められるには、エストロゲン(卵胞ホルモン)が血液中に十分存在していなければなりません。従って、プロゲステロン負荷試験で出血がない場合は、エストロゲンが体内に少ないか、月経血が子宮から出ることができない子宮内の癒着・子宮頚部の狭窄(きょうさく)などが考えられます。

消退出血のない人の追加検査

 プロゲステロン負荷試験で消退出血のない人は、原因をさらに特定するために、エストロゲンを投与して出血があるかどうかテストします。エストロゲンは子宮内膜の増殖を助けるのですが、このテストの手順は以下のようになります。先ず、エストロゲンであるプレマリンの2.5mgを21日間投与。その最後の5日間、すなわち17~21日目にプロベラ(プロゲステロン)を1日10mg投与します。

 これで出血があると、無月経の原因はエストロゲンを少なくしている病態が考えられます。その原因としては主に2つあります。一つは、FSHが高い場合である早期卵巣機能不全や神経性食欲不振。もう一つは、FSHが正常または低い場合である視床下部・脳下垂体系の病気です。

 また、これでも出血がないと、子宮大部および頚部の病気であるアッシュマン症候群や子宮頚管狭窄ということになります。

無月経の治療

 無月経の期間が長期になると、子宮内膜の過形成や癌(がん)の原因になりますので、無月経は治療の対象となります。治療は原因に応じて行いますが、極端な体重減少や増加は、食生活を改善することで体重を適正体重にゆっくりと戻します。激しい運動をしている人は中程度の運動をするように試みます。妊娠の可能性のある人は、先ず市販の妊娠テストキットで調べます。下垂体の腫瘍が原因だとブロモクリプチン(プロラクチンの分泌を抑える)で治療したり、手術的に摘出をしたりします。

 無排卵による無月経の人は、妊娠を希望しないのであれば、1~2カ月毎に10~14日間プロベラを服用するか、避妊ピルを服用するかどちらかを選択します。妊娠を希望される方は、排卵誘発剤であるクロミド(クロミフェン)を服用します。

サンディエゴの地元日系紙「ゆうゆう」の2006年6月1日号に掲載