| 第66回 にきび (Acne) |
にきびは、日本語医学用語では「尋常性ざそう」、英語医学用語では「Acne Vulgaris」と呼ばれています。英語ではAcneですが、一般的にはpimpleとかzitという言葉がよく使われています。
にきびは皮膚の病気では最も一般的なもので、アメリカでは約1700万人がにきびに悩まされています。大半は12~24才の人で、通常30才くらいまでににきびはなくなりますが、中には40~50才台になってもにきびができる人がいます。
にきびとは にきびは、皮膚の脂肪腺である皮脂腺(sebaceous glands)に関する病気です。皮脂腺で分泌された皮脂 (sebum)は、毛包(follicle)を通じて皮膚表面の毛穴まで運ばれます。この毛包が毛、皮脂、毛包の内側にあるケラチノサイトで詰まると、皮脂が皮膚表面まで到達できなくなります。その結果、皮膚の表面に存在するにきび菌(Propionibacterium acnes)が増殖し、その細菌が作る化学物質や酵素が白血球を呼び寄せ、炎症を起こし、腫れて、にきびを形成します。にきびは普通、顔、首、胸、肩にでき、場合によってはにきび跡を残すことがあります。 にきびの種類毛包が詰まった状態のことをコメド(comedo)または面ぽうと言いますが、これが初期のにきびです。このコメドが皮下に存在している場合を閉鎖面ぽうと言い、表面が白く膨らんでいるので「白にきび」または白色面ぽう(Whiteheads)とも呼ばれています。コメドが皮膚表面に達し、表面が開くと、開放面ぽうあるいは表面が黒く見えるので「黒にきび」または黒色面ぽう(Blackheads)と呼ばれます。これは汚れで黒くなったのではありません。 これ以外に、小さなピンク色をした盛り上がりで、痛みを伴うことがある丘疹(きゅうしん=Papules)、根元が赤く、膿が上についている膿疱(のうほう=Pastules)、皮膚の奥深くにでき、大きく硬く、痛みのある結節(Nodules)、これも皮膚の奥深くにでき、膿が含まれ、痛みがあり、跡が残る嚢胞(のうほう=cysts)があります。 にきびの原因はにきびの詳しい原因は分かっていませんが、一番可能性のある原因としては、アンドロゲンという男性ホルモンの分泌増加だと考えられています。アンドロゲンは思春期の男女に増加します。アンドロゲンホルモンは皮脂腺を大きくし、皮脂の分泌を高めます。また、それ以外の原因として考えられるのは、妊娠中によるホルモンの変化や避妊ピルの開始や中止。遺伝。特に、思春期男子のにきびは遺伝性が強いのではないかと研究報告されています。アンドロゲン、リチウム、ステロイドなどの薬の副作用。脂肪分の多い化粧品の使用などがあります。 皮膚の汚れやストレスはにきびの原因にはなりません。チョコレートや脂っこい食事などの食べ物も大抵の人にはにきびの原因にはなりません。 にきびの悪化要因にきびは、特に思春期の男女でみられるホルモン変化や生理前に悪化しやすく、他に、皮膚の摩擦(こする、ごしごしと荒くこする)、皮膚の刺激、ヘルメットやバックパックなどによる圧迫、空気汚染などの環境要因と高湿度なども悪化要因になります。また、にきびを絞ったり、潰したりするのもよくありません。 治療治療目標は、現在存在するにきびを改善する、新たににきびが出てこないようにする、にきび跡が残らないようにする、にきびがあることによるストレスや精神的負担を軽くする――ということですが、早期に治療することが、にきび跡を残さないようにする最善の方法です。 ▼ 軽度のにきび 市販で買える外用薬を試してみましょう。ベンゾイル過酸化物(benzoyl peroxide)、レゾルシノ-ル(resorcinol)、サリチル酸(salicylic acid)、硫黄(sulfur)などです。ベンゾイル過酸化物はにきび菌の殺菌効果があり、皮脂の分泌を抑えます。レゾルシノ-ル、サリチル酸、硫黄は黒にきびや白にきびでの角質溶解作用などがあります。サリチル酸はまた、毛包表面の細胞の解離を少なくします。 市販の外用薬でも皮膚の刺激、熱感、発赤などの副作用が出ることがあります。こうした外用薬は、その効果が出るのに2カ月近くかかることがあるので、毎日根気よく使う必要があります。 ▼ 中度から重度のにきび ベンゾイル過酸化物、tretinoin, adapalene, azelaic acidなどを使います。抗菌剤とazelaic acidは細菌の増殖を抑え、炎症を改善します。 トレチノイン(tretinoin = Avita, Retina-A)はレチノイド(ビタミンA類似体)と呼ばれる種類の外用薬で、新しいにきびの発生を抑えます。また、コメドの原因となる毛包の詰まりを改善する働きがあるので、抗菌剤などが毛包に入るのを助けます。トレチノインより新しいレチノイドであるtazarotene (Tazorac)やadapalene (Differin)も使われます。両者ともコメド形成を阻害します。 クリームとローションは保湿効果があり、皮膚の敏感な人向きです。ジェルと液体には通常アルコールが含まれ、皮膚を乾燥させるので、非常に脂肪分の高い皮膚の人や高湿度の環境下にいる人に向いています。こうした外用薬を使い始めると、一時的に皮膚の状態が悪くなることがありますが、大抵はその後に改善してきます。副作用としては、発赤、ぴりぴり感、皮膚がむける、熱感、皮膚の色が変わるなど。レチノイドは使っているうちに副作用が改善することが多くあります。にきびの治療は長期戦です。薬剤の効果をみるのに1-2カ月かかるのが普通です。 経口薬は外用薬と共に使用したり、あるいは単独で使用します。経口抗菌剤としては、ミノサイクリン、テトラサイクリン、ドキシサイクリンなどがあります。副作用としては、日焼けを起こしやすくなる、むかむか感、目まい、立ちくらみ、皮膚の色の変化など。テトラサイクリンは8才以下の子供や妊婦には歯の色を変えるので禁忌です。テトラサイクリンとミノサイクリンは避妊ピルの避妊効果も下げることがあるので、ピル以外の避妊法も同時に行う必要があります。 ▼ 難治性のにきび 前述した治療法で効果がない人や、結節や嚢包のある重症のにきびは、経口のレチノイドであるイソトレチノイン(isotretinoin = Accutane)の対象になりますが、これは皮脂腺のサイズを小さくします。その結果、皮脂の量が減り、細菌の増殖も抑えられます。イソトレチノインは、15~20週間の治療で9割近くの人に効果がみられ、にきび跡を防ぐのに非常に効果的です。但し、イソトレチノインは副作用も多く、特に胎児への催奇性が強いので、イソトレチノインを服用する女性は避妊を確実にする必要があります。他の副作用としては、精神症状の変化、食欲不振、集中力の低下、目・口・鼻あるいは皮膚の乾燥、鼻血、肝機能異常、コレステロールの増加など。イソトレチノインを服用する時は、服用前と服用後は定期的に血液検査をする必要があります。 ▼ 避妊ピル 特に、アンドロゲンホルモンの多い人。例えば、多毛、生理前のにきびの増悪、生理不順のある女性に対して、低エストロゲン避妊ピルは卵巣からのアンドロゲンの生成を抑えます。低容量のプレドニゾンやデキサメサゾンは副腎からのアンドロゲンの生成を抑えます。あるいは、スピロノラクトンといった抗アンドロゲン薬を使用することもあります。抗アンドロゲン薬の副作用としては、生理不順、乳房の張り、頭痛、疲労などがあります。 ▼ 他の治療法 炎症を起こしている結節や嚢包へのステロイドの注射。コメドの直接除去。にきび跡を消すには、レーザー治療やマイクロダームアブレージョンなどがあります。 スキンケアのしかた。にきびの薬物治療とは別に、スキンケアも治療の一環として大切です。1日2回、マイルドなクレンザーを使用して顔を優しく洗浄します。皮膚がそれほど油っぽくなければアストリンゼン(収斂=しゅうれん=性のある化粧水)は勧められません。使うとしたら、油っぽい場所のみに適用します。油っぽい毛髪の人は毎日シャンプーで髪の毛を洗います。 必要がなければ、皮膚にあまり触れない。あるいは、にきびを潰したり絞ったりすると、にきび跡が残ったり、皮膚の色が変わることがあります。 髭(ひげ)剃りは深剃りを避けます。安全かみそりを使用する人は、よく切れるかみそりを使用し、石鹸とぬるま湯で剃る部分を柔らかくし、髭剃りクリームを使用して髭を剃ります。 日光を避ける。にきびの外用薬の多くが日焼けを起こしやすい副作用を持っています。それ以外にも、日焼けは皺(しわ)と、皮膚がんの原因にもなります。 オイルの入っていない化粧品を利用すること。"noncomedogenic"という言葉をレーベルで探して下さい。これは、この化粧品が毛包を詰まらせないという意味なのです。しかし、このような化粧品を使用してもなお、にきびができる人がいます。 サンディエゴの地元日系紙「ゆうゆう」の2006年1月16日号に掲載
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にきびは皮膚の病気では最も一般的なもので、アメリカでは約1700万人がにきびに悩まされています。大半は12~24才の人で、通常30才くらいまでににきびはなくなりますが、中には40~50才台になってもにきびができる人がいます。