| 第62回 性感染症 (STDs = sexually transmitted diseases) その2 |
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前回に続いて、今回も性感染症について説明します。今回は、B型肝炎やHIV感染症などのように、性行為以外の感染様式 (例えば、静脈注射による) を持つものも加えています。
梅毒 Syphilis 梅毒は細菌で起こる性感染症で、それほど頻度の高い性感染症ではありませんが、女性は20代前半、男性は30代後半での感染が多いと報告されています。 梅毒は外性器、膣(ちつ)、肛門、直腸、口唇、口腔内などに存在する皮膚病巣からうつり、感染は通常のセックス、オーラルセックス、肛門セックスなどを通じて起こります。感染者の多くは感染後何年間も症状がありません。また、感染者の多くは自分が感染していることさえ知りません。 梅毒には3つの時期がありますが、感染力のある時期は主に第1期と第2期です。感染直後の第1期では、接触後3カ月以内に皮膚病変が生じてきますが、よく見逃されます。適切な治療をしないでいると、第2期、第3期に入っていきます。 診断は血液検査で行います。治療は初期ほど簡単で1回の注射で済みますが、時間的に経過していくと何回かの注射が必要になってきます。 トリコモナス症 Trichomoniasis トリコモナス症はアメリカでは非常に頻度が高く、毎年740万人もの人が感染しています。トリコモナスは原生動物の寄生虫で、女性では膣、男性では尿道に感染を生じます。男性の場合は感染をしてもほとんど無症状ですが、症状があるとすれば、尿道の違和感、分泌物、排尿時や射精時の違和感などです。女性も無症状の人が大半ですが、症状としては、強いにおいを伴う黄色いおりもの、排尿時やセックス時の不快感、外陰部のかゆみや刺激、それに下腹部痛などです。症状は、性行為数日後から4週間以内に発現します。診断は診察と顕微鏡検査で行います。治療はメトロニダゾールという抗菌薬を1回服用します。男性の感染者の場合、治療なしでも症状は改善しますが、症状がなくても性交渉の相手を感染させます。性交渉の相手も同時に治療することが必要です。 細菌性膣炎 Bacterial Vaginosis =BV 細菌性膣炎は厳密な意味での性感染症ではないのですが、膣炎で最も頻度の高いものです。これは膣の中の常在菌のバランスが崩れ、「悪い」細菌が異常に増殖した時に起こります。アメリカでは16%の妊婦が感染していると疑われています。細菌性膣炎は頻度が非常に高い割りには、どのようにして起こるのかはあまり理解されていません。新しくセックスの相手を変えた時とか、複数のセックスの相手がいる場合とか、膣洗浄、IUD (子宮内避妊器具)があると細菌性膣炎にかかりやすくなると考えられています。但し、トイレ、プール、寝具などからは感染しません。 細菌性膣炎があると、HIV、クラミジア、淋菌にかかりやすくなるばかりではなく、人工中絶や子宮摘出などの手術後に骨盤腔内炎症を起こしやすくなります。また、妊娠中の感染は妊娠に伴う合併症を増加したり、低出生体重児の出産に関与することがあります。診断には、診察及び顕微鏡による検査、pHの測定、免疫学的検査などがあります。細菌性膣炎は治療をしなくても良くなることがありますが、症状のある人は、合併症を避けるために治療の対象になります。男性パートナーには通常治療は必要ありません。妊婦で細菌性膣炎のある人も治療の対象になります。治療はメトロニダゾールのような抗菌薬の服用か、膣内クリーム、膣錠などを使用します。 B型肝炎 Hepatitis ウィルス性肝炎であるB型肝炎が性交渉で感染することを知らない人は少なくありません。日本では以前、B型肝炎の感染というと母親から新生児への感染、すなわち垂直感染が中心でしたが、最近ではアメリカと同様にセックスによる横への広がり(水平感染)が心配されています。 B型肝炎はB型肝炎ウィルスによる感染症ですが、感染者の血液、精液、唾液などの体液が非感染者の体内に侵入することによって起こります。セックス以外にも、針刺し事故、IVドラッグ中毒者間の注射針共用、B型感染者との密接な生活共有などから感染する可能性が出てきます。B型肝炎ウィルスに感染すると、約3割の人は何の症状も出ませんが、残りの人は、皮膚や白目が黄色になる黄疸、疲労、腹痛、食欲減退、吐き気や嘔吐、関節痛などの症状が起こります。診断は血液検査で行います。 B型肝炎ウィルスに感染するとほとんどの人は治癒しますが、約1割弱の人は慢性肝炎になります。慢性肝炎になると、肝硬変や肝臓がんになるリスクが高くなります(約2割程度)。 予防は、感染者とセックスをしない、感染者の使用したかみそりや歯ブラシなど血液の付着した可能性のある物を使用しない。また、刺青(いれずみ)や耳や体にピアスの穴を開けるときは、完全に滅菌消毒した器具を使用している安全な店を選ぶことなどが大切です。現在、アメリカでは鍼灸師の使用する針は完全滅菌された使い捨ての針が使用されています。感染者と生活接触の可能性のある人は、B型肝炎の予防接種を計3回受けるようにして下さい。 後天性免疫不全症候群 HIV/AIDS HIV (ヒト免疫不全ウィルス)が性交渉で感染することは長く知られています。体液の中でも血液と精液に多くHIVが存在するので、性交渉によって精液と接触したり、肛門セックスなどによる外傷によって血液に触れると感染の可能性が高くなります。 HIVに感染しただけではすぐに症状を呈することは稀(まれ)ですが、長期経過後に、免疫低下による様々な症状を生じるようになります。この状態をエイズといいます。HIV感染後エイズになるまでの期間は、無治療では数カ月から17年程度の間ですが、通常は10年前後です。但し、症状がない潜伏期間でもHIVの数は体内で確実に増え続けます。 HIV感染症の治療で最も大切なことはHIV感染の早期発見・早期治療です。早期に発見して、早めに抗ウィルス治療をすれば、HIV感染の進行を遅くすることができるからです。また、HIV感染者がかかりやすい病気の予防も可能になります。その上、HIV感染を他の人に広がるのを防ぐこともできます。 HIVの検査は血液で行いますが、HIV感染後3カ月までに95%以上の確率で陽性になりますが、HIV感染後すぐに検査をしても陽性に出ないことがあります(偽陰性といいます)。アメリカや先進国でのHIVはHIV1型がほとんどですが、HIV2型感染者もたまに存在します。 性感染症があるとHIV感染の確率が2~5倍に上昇します。従って、性感染症の早期発見、早期治療がHIV感染の予防にもつながってくるのです。クラミジアなどの性感染症や膣炎の検査の際にHIVの検査を受けることも重要です。 サンディエゴの地元日系紙「ゆうゆう」の2005年9月1日号に掲載
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