第60回 血尿(Hematuria)
血尿は比較的よく認められる異常の一つですが、原因は激しい運動から腫瘍に至るまで、極めて広範囲にわたります。大半は比較的心配の要らない原因ですが、高齢者だと癌 (がん)、子供だと先天性尿路奇形の可能性もあり、慎重な検査が必要になってきます。 血尿は尿中に赤血球が存在することによって起こる異常ですが、肉眼で分かる肉眼的血尿と、顕微鏡でしか分からない顕微鏡的血尿に区別されます。肉眼的血尿では、尿がピンクや赤色、あるいは紅茶やコーラの色をしています。肉眼的血尿は尿中の赤血球の数が多く、主に泌尿器科的な疾患が多く含まれます。逆に、顕微鏡的血尿は赤血球の数が少なく、内科の疾患が多く含まれます。いずれの場合も、顕微鏡の強視野で、赤血球が5つ以上含まれることが疾患としての血尿の条件です。

血尿の原因

 血尿の原因は必ずしも尿路系の異常ばかりとは限りません。例えば、女性の場合、生理の血液がおしっこに混ざり、血尿になることがあるのです。従って、生理中の女性で血尿が認められれば、それは一概に異常とは言えないのです。また、激しい運動を行った後も血尿が出ることがあるので、運動後24時間以内の血尿も異常でない可能性があります。それ以外に、薬の副作用でも血尿が起こります。  膀胱炎と腎尿管結石が血尿で最も多い原因ですが、両方とも肉眼的血尿も顕微鏡的血尿のいずれも起こします。若い女性で、頻尿や排尿痛があって血尿があると、かなり高い確率で、その血尿は膀胱炎によるもと言えます。

 泌尿器科的な血尿の代表的なものとしては、腎臓・尿管・膀胱の腫瘍、前立腺の肥大、尿路の閉塞、尿路系の外傷 (マスターベーションも含む) や異物、尿路系の先天的な奇形などがあります。内科的な血尿としては、感染後や自己免疫疾患などで起こる糸球体腎炎、血液が固まりにくくなる病気などがあります。子供の場合、尿中のカルシウム量が多くなる高カルシウム尿症、ヘノッホ-シェーンライン紫斑症、溶血性尿毒性症候群、溶連菌感染後糸球体腎炎などが原因として含まれます。

 原因不明の血尿の多くが、実はIgA腎症という病気によって起こっている可能性があります。IgA腎症は世界で一番頻度の高い慢性糸球体腎炎であるにも関わらず、診断が困難なので、IgA腎症でありながら、実際には原因不明の「特発性血尿」として診断されているケースが多くあります。IgA腎症の患者さんのうち、3~4割の人は血液中のIgAという免疫グロブリンが高くなりますが、IgA腎症の診断の決め手にはなりません。IgA腎症を正しく診断するためには、腎生検という腎臓の組織を取る検査が必要になってくるのです。

血尿の検査

 上述した血尿の原因を突き止めるために様々な検査が必要になってきますが、尿の簡易検査と顕微鏡的検査が特に重要です。テスト紙による簡易検査では、血尿の有無のみならず、白血球、尿糖、タンパク質などの有無が分かります。顕微鏡的検査では、実際に赤血球が尿中に存在するのかどうか (簡易検査で血尿があっても、顕微鏡で赤血球が認められないこともあります)、一視野中にいくつ赤血球が存在するか、赤血球円柱 (糸球体腎炎で見られる) などが存在するかなどが分かります。

 膀胱炎の可能性があって、簡易尿検査ではっきりしない時は、尿の培養が必要になってきます。腫瘍などを疑うと尿の細胞診という検査をしますが、これだけで腫瘍の有無を判断することはできません。腫瘍の有無を調べるためには、後で説明するような画像診断なども必要になってきます。血液検査では腎機能、抗体、血液の固まりやすさなどを検査します。

 腎臓の超音波検査では腎結石や腫瘍などを調べます。泌尿器科的血尿には膀胱鏡やIVP (静脈から造影剤を注射して、腎臓などの尿路系をX線撮影する) などを行いますが、最近では、スパイラルCT (コンピューター断層撮影) によるユーログラフィ- (尿路造影) がIVPに代わってよく行われます。糸球体腎炎で、尿検査、血液検査などを通しても診断が確定できない時は、腎臓の生検 (組織検査) が必要になってきます。

血尿の治療

 血尿の治療はその原因によって異なってきます。膀胱炎は抗生物質の服用、尿路系の結石はそれを排出することですが、結石の場合は大きさや場所などでその治療法が決まってきます。結石が小さく、かなりの確率で自然排出が期待できる時は、痛み止めだけで様子を見ます。腎臓近くにあって大きい場合は、外から衝撃波によって破砕します。尿管の途中で身動きの取れなくなった結石は、内視鏡的に砕いて取り除きます。

 糸球体腎炎の治療は症状の程度に応じて変わってきます。ステロイドや細胞傷害性を持つ薬の服用や血漿 (けっしょう) 交換が必要な場合もあれば、軽度IgA腎症のように治療が不要な場合もあります。また、高血圧やむくみのような症状の改善のために薬を服用することもあります。

 前立腺肥大、腫瘍、異物、薬の副作用などは原因を取り除くことによって治療できます。

最後に

 血尿は、必ずしもその原因である疾患が簡単に突き止められるわけではありませんが、高齢者は腫瘍の可能性、子供は先天性奇形などの可能性が高くなるため、可能性のある原因に従って、検査を進めていくことが重要です。

サンディエゴの地元日系紙「ゆうゆう」の2005年7月1日号に掲載