第29回 バルトリン(腺)膿瘍 (Bartholin’s abscess)
症状:外陰部の腫れ、痛み

25才のIさんは、外陰部の腫れを感じていましたが、痛くもないので無視をしていました。とこれが3日前から痛みが起こり、坐っているのも辛くなり、近くの婦人科を受診しました。バルトリン膿瘍と言われ、すぐに小さなチューブを挿入されました。

バルトリン腺は、女性の外陰部の小陰唇の肛門に近い側に、左右ある分泌腺です。膣前庭部という部分に液を分泌し、湿り気を与えます。この出口が塞がると、バルトリン腺に液が溜まり、バルトリン腺のう胞という状態になります。バルトリンのう胞は1-3cmの多きさで、普通は痛みなどの症状を伴うことはなく、ゆっくりと大きくなります。バルトリンのう胞が細菌で感染すると、バルトリン腺の中に膿が溜まり、急速に大きくなり、痛みを伴うバルトリン(腺)膿瘍という状態になります。バルトリン膿瘍による症状は、外陰部の腫れ、痛み、性交痛、熱などです。

診察では、バルトリン腺の触診をします。解剖学的な位置、圧痛、触診から、バルトリン膿瘍の診断は比較的容易です。ただし、40才以上の人や、バルトリン膿瘍が大きい場合は、他の疾患の可能性も考える必要があります。

少し大きくなっているだけで、圧痛がなければ、40才以下の人には特に何の治療も要りません。圧痛があれば感染している証拠なので、中に溜まっている膿を取ることになります。自宅でできる治療法としては、患部を頻回に暖める方法(1日4回程度を数日行う)があります。これだけで、自然に膿が排膿してしまうことがありますが、再発も少ないありません。

排膿の手段としては、注射器で吸引する方法、直接切開してガーゼを詰め込む方法、カーテーテルを挿入してしばらく放置する方法などがあります。何度も膿瘍を繰り返す時は、恒常的な排膿管を作るか、バルトリン腺そのものを除去することもあります。注射器で吸入する方法や、直接切開・排膿する方法は再発率も高いので、一般的にはゴムチューブ(ワード・カテーテル)を挿入し、数週間そのまま放置しておく方法が用いられています。ただ、正しく処置しても約1割の人は再発をします。

2-3日暖めも改善のない時や、痛みが激しい時、熱が38,5度以上ある時は、主治医に連絡をしてください。バルトリン膿瘍は、アメリカでは20才台の女性に多く、昔は性病との関係が強いようでしたが、今ではいろいろな細菌が原因菌になることがわかっています。ただし、膿は採取して、淋菌とクラミジアの検査を念のためにします。

記事中の患者さんは架空の患者さんです。

サンディエゴの日系紙「Lighthouse San Diego」に2005年3月16日号に掲載。